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ぼくたちはセックスのことをあまりよくしらない

 

「で、ここからどうするの」

制服のワイシャツを腕から抜きつつ、ベッドに腰掛けた彼女が批判的な目で問いかける。数秒間、数十秒、会話が中断したとされるくらいの間、彼は答えられない。

「ねえ、どうするんだろうね」

情けない。脳裏からそんな声が聞こえた。とっさの彼はあいまいな返答しかできなかった。

「ホテルまで連れ込んでおいて、どうするんだろうね、は無責任じゃないかしら」

彼女はワイシャツを完全に脱いで畳む。それを見て、彼も脱がなければいけないらしいことを思い出す。それはおそらく全裸体で行われるらしかった。むしろ、確かなのはそれくらいだった。

 

終業式のあと、最後の長期休暇に向けテンションが上がった彼らのグループ–––それは2人より大きい社会だ–––はパーティをした。

パーティが終わると夜は更け、深夜と早朝のあいだに2人だけが取り残されていた。列車はもう運行していなかった。ホテルがあった。

結果2人はホテルに入ることにした。ホテルはセックスをするために用意されたタイプのものだった。

男女2人で入ったらセックスをしなければいけない。そういうコンテクストが壁とかシステムとかそういう社会的構築物の一種としてそこに鎮座していて、つがいと見做されてしまった2人は各個人の持つ無限の行動責任において社会的ノームに逆らうことをしなかった。

しかしそれは全ての問題を解決しなかった。他の全ての環境でそうであるように、若さに由来する経験の大幅な欠如はアプリケーション・サービス・プログラムの不在として、行動しようとする彼らを阻む。彼らは実際にセックスをするには、あまりにも経験と知識がなかった。

もちろん統計学的に見れば、彼らの年齢において彼らの状況の全ては何の不自然さもない。セックスをしようとすることもそれが初めてであることもアノマリーとは認められないのだ。

そういう話ではない。全体で珍しくなかろうが何だろうが彼らは今大きな困難に立ち向かっているのだ–––ある種前向きな姿勢で。それは青くて痛々しく美しいことなのだ。

 

何にせよ、少なくとも彼には痛さと苦しさしか感じられないようだ。この大いなる脱皮を、あるセクションの終わりを良き思い出とするには痛々しさが生々しすぎたし、そもそも彼は今それに立ち向かうことだけで精一杯なのだ。

 

「下着は僕が外すべきだ。そんな気がする」

彼は戸惑いながらもはちきれそうに膨れ上がったペニスをボクサーパンツの中に認めながら言う。

「分かるの?外し方」

彼女はさも無邪気な様に言う。

「分からない」

「じゃあわたしが自分で外したほうがいいね」

彼女はより論理的に発言し、乳房をあらわにした。

「これは触ってもいいのかな?」

彼は乳房に思わず釘付けになって恐る恐る言う。

「そういうことを聞くべきじゃないよ。承認を与えるときにそれに対する承認を求めてはいけない」

さっきからずっとまっすぐ目を見つめてくる彼女の視線を持て余しつつ、彼は承認を与えた。