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UF423便

創作 単発

メニューをしばらく読んで、カップヌードルを食べることにした。

カップヌードルならば5ドルである。この割高なメニュー上においてコーラとも大差のない値段だ。空腹と退屈を紛らわすにはちょうどいいと思った。
大会へ向かう飛行機の中だった。皆でとくべつ安い便をとったので機内食などはついていなかった。
雑誌も置いていない。

「カップヌードル、ひとつください」

ピンク色の5ドル紙幣を挙げてキャビン・アテンダントを呼び止めた。
金髪の彼女はきわめてビジネス的に口角を上げると、金を受け取りカップヌードルにフォークを添えて差し出した。

「よく食べるね。きみってやつは」

かすれた眠たげな声の主は、隣に座る我らがエースだ。気怠そうに目をこすっている。

「いったいどれだけ食べれば気が済むんだ。乗る前にも大きなハンバーガーを平らげてなかったかい?」

まぶしいのだろう。目を開けられず半目のままでしかしこちらに顔を向けて、いたずらっぽく笑った。彼女は笑うと両頬にえくぼができた。
いつも通り平静を装って目を彼女から背ける。とっさだ。そして腕時計をいじってタイマーを3分に設定する。

「背が大きいですから」

そっけなく答える。ふうん、とエースが窓へ頭をむけた。わたしは震えた。
長い髪から甘ったるい、形容しがたい匂いがしたのだ。頭の裏側から殴られたような鋭い衝撃。

女だ。これが女の匂いなのだ。

わたしはこらえて、じっとタイマーの数字を見た。必死に残り時間に集中した。
3分間が永遠のように思えた。


やがて完成し、ズルズルすする。いつもここで彼女は起き上がり—―。

「なあ。ひと口だけ分けてくれ」

こう言う。そして返事も待たずにカップヌードルをひったくる。
何も気にしない風でわたしの使ったフォークをスープに突き立て、麺をほじくって口に入れた。こちらも意識してはいけない。意識したら負けだ。

「悪くないじゃないか」

とぼけたことを言う。こちらの気も知らずに。

「先輩って、ホンットいやなやつですよね」

吐き捨てるように言った。彼女は、何も言わず窓の外を見ていた。