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時給782円

【16:00】 そろそろバイトに出かける準備をしなければならない。憂鬱だ。 失敗したら先輩に迷惑をかけてしまう。店長が持て余したように、諭すように注意してくる。嫌だ。僕を排除するな。 僕はここにいなければいけないんだ。排除されたら逃げたくなってし…

ロマンチックを飲みましょう

ロマンチックを飲みましょう かつて、地球上には戦争や飢餓が絶えなかったそうだ。21世紀前半までの未熟な社会システムは、すべて人間を幸福に導くものたり得なかった。仕方のないことだ。未熟さが回避できない。 何にせよ、そういう苦しんだ人間たちの気持…

意外なコリジョン

うかつだった。 ベータスフィアは気づいていたんだ。 わたしが逃げ出して、地下鉄跡を通ってここに出るって。ベータスフィアは、あまりにもたくさんの眼に接続されている。 戦前に打ち上げられた偵察衛星は数え切れない。 ドローンもそこらじゅうにいるんだ…

土井先輩

3年の土井先輩は人気があった。1年男子からの卑しい羨望の目を向けられていた。そういう意味だ。同時に、僕も人気があった。土井先輩を密かにアイドルのようにあつかうやつらに人気があった。僕は中学一年生にしては性知識が豊富だった。あのコンテクストの…

不定期連載・侵蝕と対策(2)

前回: hab.hatenablog.com

侵蝕と対策(1)

数学嫌いが多い中で高等数学をとっている人間は奇特であり、他の進学教科が2クラスあるのに高等数学だけ1クラスしかない所にも生徒の少なさが現れていた。その少ない生徒も小難しい授業にだんだん興味や熱意を失っていき、18人いたクラスは2年目が始まるころ…

政治

数の子で満たされた六畳間に彼は住んでいた。 彼は数の子があまり好きではなかった。友人はいなかった。寿司は好物であり、たびたび場末の安い寿司屋に出かけた。 寿司屋に行く前には必ず服についた数の子をよく落としてから行った。それでも多少はついてお…

転職デビュー大作戦!! TVカット版歌詞

転職デビュー大作戦!! 作詞:俺 作曲:バグベア  今のポジション 甘んじてたら 今月給料 2分の1 ホントはわたし やればできる子 少し怠けた だけだもん!!そりゃ残業もオール拒否だし 企業ドラマみたいな成功も 縁のない普通の平社員だけど 背伸びしちゃって…

ペアルック

この瞬間を僕はずっと待ち望んでいたのだ。 今、校内は僕だけしかいない。他はみんな出払っている。今なら何もかも僕一人の思い通りに出来る。なんでも出来るが、やることは一つだけ。 あの女子、こないだ社会のテストで学年トップをとった奴。彼女のロッカ…

中華街(1)

「あーっ。ペペロンチーノが食べたいなーっ」ペルシャはピンク色の箸を放り出してわめいた。イタ飯かぶれの彼女にとって、中華料理はもう飽き飽きなのだ。「そんなこと言ったってしょうがないだろう」呆れ顔で応じたのは食卓の対角側に座った男。四角い顔に…

イヤホンは断線する

憂鬱だ。買ったばかりのイヤホンが断線したのだ。 だいたい私はイヤホンを断線させすぎる。今年に入ってから、もうこれで三個目だ。 もうイヤホンは買わない。通勤途中。音楽を聞けないのでムシャクシャする。 みんな私を見ている。私を見て笑っている。 な…

バスタオルの神様

神様になることにした。給料がいいからだ。 八百万の神とはよく言ったもので、この世に存在する万物には神が宿っている。 最近はいろんな物が増えるので神様の数が足りなくなり、新人を募集し始めたらしい。神様になるにはまず試験を受けなければいけない。…

二組の横林さん

二組の横林さんの胸は大きかった。 他の女子と比べて明らかに大きい。体育で体操着など着ると、くっきり丸い双丘が現れた。 地味な彼女があんな立派なものを持っている状態は、僕を困惑させた。しかし、僕はそれを決して口にしなかった。 別に横林さんが好き…

UF423便

メニューをしばらく読んで、カップヌードルを食べることにした。カップヌードルならば5ドルである。この割高なメニュー上においてコーラとも大差のない値段だ。空腹と退屈を紛らわすにはちょうどいいと思った。 大会へ向かう飛行機の中だった。皆でとくべつ…

或る夏の日の追跡 (1)

ある夏の日の昼下がり。僕はまさしく不毛と呼んで差し支えない虚無の時間をぼうぜんと過ごしていた。 文化と教養あふれる誇り高き人間社会の一員として、考えうる限り最悪の行動で夏期休暇をいたずらに消費していた。つまり何もせずただダラダラと過ごしてい…

『電子レンジのテーマ』

電子レンジのテーマ作詞:原町田アフロボンバー 作曲:上松範康(Elements Garden)、編曲:藤永龍太郎(Elements Garden) 歌:渋谷凛(福原綾香)(チン!チン!チチンチン! できた!) (チン!チン!チチンチン! レンジ!)でんでんででん でんでんでで…

バズ・ライトイヤーをさがして(2)

(1からのつづきです) 昔なじみの後輩からバズ・ライトイヤーのストラップをもらった数週間後の朝。私は寝坊した。 朝練がいつもの木曜から火曜に変わった事を失念しており、目覚ましアラームをセットし損ねたのだ。気づいた時にはもうすでに六時半、朝練開…

『おしっこしたい』

おしっこしたい 作詞・作曲・唄: 原町田淳一目がまわるほど 苦しくなりそうな さんざんな日のあと 僕は家に帰る 電車の振動に 殺意を感じたら 足の間に潜む悪意に気づくおしっこしたい どうしょうもないぐらいに おしっこしたい 今すぐ出したいのさ Huh...…

ワニ肉へのアンチテーゼ

(都内某所) 「どうも、お久しぶりです」「あっ、はいはいどうもどうも」「すっかり冬ですね」「はい、うん、もう大分冷え込んじゃってね。困ったもんよ」

バズ・ライトイヤーをさがして(1)

「ピクサー映画っていうのは、ファインディング・ニモで一旦完成されちゃったって言うかピークを迎えたんですよ」帰宅道中に買ったコンビニカレーパンの微妙さに失望していると、とつぜん後輩は講釈を垂れはじめた。その退屈さに、部活の疲れと夕暮れの薄暗…

期待と幻想と失墜のカレーパン

サクサクと香ばしいカレーパンの内側から溢れ出す熱々のカレー・ソース。それを思い浮かべた時、私はもうすでに走り出していた。カレーパンは決して私の大好物ではない。私はまだ若く青臭いが、世の中にカレーパン以上に美味いものがあることを感知しないほ…